もうキックは東高西低なんていわせない。3月13日、テクスピア大阪で『DEEP☆KICK 59』が開催された。試合は激闘の連続。関東から遠征してきた選手はことごとく関西在住の選手の餌食となった。大会後、続く4大タイトルマッチの合間には3月27日の「RISE156」や4月2日の「Cygames presents RISE ELDORADO 2022」に出場する中野椋太(NJKF誠至会)、中村寛(BK GYM)、鈴木真彦(山口道場)が公開練習を行ない決意表明をするという画期的なアトラクションも行われた。
(文・布施鋼治/写真・石本文子)
メインイベント 岩郷泰成 VS 大前洸貴
ともにモチベーションはマックス。メインイベントでは岩郷泰成(TFT)と大前洸貴(INFINITY KICK BOXING GYM)による-60㎏挑戦者決定戦が組まれた。岩郷は昨年7月に同王座決定戦に出場するチャンスを得たが、大樹(HAWK GYM)にスピリットデシジョンで敗れ王座奪取に失敗した。今回は短い期間で再びチャンスを掴んだことになる。
対する大前は理学療法士という別の顔を持つ異色のキックボクサー。「その知識を駆使し、自分の体と努力でどこまで通用するのか試したい」とキック界に飛び込んできた、きめ細かい試合運びに定評のある頭脳派だ。
両者の闘い方をイメージすれば、剛の岩郷、柔の大前ということになるか。果たして1R、岩郷がワンツーからのヒザを軸にどんどん手数を出していけば、大前はじっくり相手の出方を見ながら反撃の機会をうかがう慎重な展開をみせる。
続く2R、岩郷は離れ際の右フックをライトヒットさせるが、大前はガードが固く追撃を許さない。そして距離を潰すように至近距離での闘いを挑む。途中から岩郷のスリップダウンが目立つようになる。大前の左がヒットする場面もあった。
オープンスコアは1-0で大前。3Rに入ると、岩郷は右ローを軸に試合の流れを掴みにかかる。すると、大前もやり返す展開となる。白熱したシーソーゲームに観客席からは「いい試合だ!」という声も飛ぶほどだった。そうした中終盤になると、大前は右を中心に岩郷をコーナーに詰めての攻撃を繰り返す。この攻防がモノをいったのか、判定は3-0で大前。
DEEP☆KICKで2勝目を挙げた頭脳派は来る6月12日に王者・大樹に挑戦するチャンスを得た。「岩郷選手は強くて、途中で倒れてくれるかと思ったけど、なかなか倒れてくれなかった。無事勝つことができてよかった。世の中はウクライナで大変だったり、身近な人が病気になったり、自分自身も病気になったり、いろいろ大変なことばかりだけど、僕がどうこうできることではない。ただせめて僕が頑張っている姿を見てもらって、ベットから出られない人もいまは試合をスマホ越しに応援できる時代。ちょっとでも僕の頑張りがそういう人たちを元気づけられるようになったらいい」とネットでライブ中継できる大会への出場を目指すことを口にした。確固たるテーマを持ち、目的意識がハッキリしている選手は強い。
▼メインイベント
DEEP☆KICK-60kg挑戦者決定戦 3分3R 延長1R
×岩郷泰成(TFT)
○大前洸貴(INFINITY KICK BOXING GYM)
判定0-3(28-29、28-30、28-29)
※大前が-60kg次期挑戦者に決定
セミファイナル2 KING剛 VS 長谷川海翔
35歳と16歳による第4代DEEP☆KICK-53㎏級王座決定トーナメント準決勝は若い長谷川海翔(誠剛館)に凱歌があがった。公式発表によると、両者の身長差は10㎝だが、実際に対峙してみるとそれ以上の差があるように感じた。
果たして1R、鋭い左ストレートや前蹴りでKING剛(ROYAL KINGS)を威嚇していた長谷川海翔は左ハイで最初のダウンを奪う。その後は立て続けに左ストレートでダウンを奪い、1R2分44秒、TKO勝ちを収めた。
マイクを握ると、長谷川はまだ幼さが残る口調で「トーナメントで優勝するのは僕なのでよろしく」と自信満々に宣言した。叔父に拳剛、兄に長谷川英翔を持つ姫路のサラブレットは6月の王座決定戦までにどこまで強くなっているか。
▼セミファイナル2
DEEP☆KICK-53kg王座決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R
×KING剛(ROYAL KINGS)
◎長谷川海翔(誠剛館)
TKO 1R2分44秒 レフェリーストップ
※長谷川が-53kg王座決定トーナメント決勝に進出
セミファイナル1 龍太郎 VS KAZUNORI
1R開始早々、KAZUNORI(T-KIX GYM)はバッティングによって左目の周辺をカット。流血してしまい、劣勢を余儀なくされる。
このチャンスを逃してなるかとばかりに龍太郎(真門ジム)はワンツーを中心にとどめにかかる。しかしあまりにも攻め急いでしまったのか、ラウンド終了間際右をきれいに合わされダウン。試合の流れを引っくり返されてしまう。
2R、龍太郎は再び打ち合いに持ち込むが、ダウンを奪い返すまでには至らない。そして迎えた3R、龍太郎はこれからという矢先に左で2度目のダウンを奪われ万事休す。判定は三者とも30-26でKAZUNORIを支持した。6月の-53㎏級トーナメント決勝は16歳のルーキーと静岡在住のベテランで争われる。KAZUNORIは決勝でもベテランの味を如何なく発揮することができるか。
▼セミファイナル1
DEEP☆KICK-53kg王座決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R
×龍太郎(真門ジム)
○KAZUNORI(T-KIX GYM)
判定0-3(26-30、26-30、26-30)
※KAZUNORIが-53kg王座決定トーナメント決勝に進出
第11試合 中澤友 VS 竹市一樹
テコンドー出身の中澤友(魁塾/ビンチェレあべの)は横に構えながら密着した体勢からの強い蹴りを放つことができる30歳。この日は40戦以上のキャリアを誇る竹市一樹 (MA二刃会)が相手だったが、2R終盤にワンツーの連打で試合の流れを掴むと一気に攻略。
3Rになると、竹市が崩れたところに左ハイを決め、3R1分15秒、豪快なKO勝ちを収めた。個性的なファイトスタイルを武器に再浮上なるか。
▼第11試合 DEEP☆KICK-65kg契約 3分3R
◎中澤友(魁塾/ビンチェレあべの)
×竹市一樹 (MA二刃会)
TKO 3R1分16秒 レフェリーストップ
第10試合 マサキ VS 森川勇哉
▼第10試合 DEEP☆KICK-68kg契約 3分3R
×マサキ(多田ジム)
○森川勇哉(WARRIOR OSAKA)
判定0-3(28-29、28-30、27-30)
第9試合 KING龍蔵 VS 湧也
▼第9試合 DEEP☆KICK-55kg契約 3分3R
×KING龍蔵(ROYAL KINGS)
○湧也(BOSS GYM)
判定0-3(28-29、28-30、28-29)
第8試合 REN VS 濱田祐生
▼第8試合 DEEP☆KICK-57.5kg契約 3分3R
×REN(WIZARD)
○濱田祐生(山口道場)
判定0-3(28-30、29-30、28-30)
第7試合 小田尋久 VS 立石凛太朗
小田尋久(キックボクシングジム3K)は1Rからボディフックやカウンターのヒザ蹴りで試合を優位に進める。2Rになると、左ローを中心に立石凛太朗(魁塾 中川道場)に連続攻撃を浴びせ、足を止めさせる。とどめは左のカウンターのヒザ蹴りだった。まだプロ2戦ながら全勝全KO。キックボクシングジム3Kに所属しフィジカルに優れているだけに、選手層がまだ手薄な70㎏級戦線の第一線に浮上してくる可能性が大。
▼第7試合 DEEP☆KICK-70kg契約 3分3R
◎小田尋久(キックボクシングジム3K)
×立石凛太朗(魁塾 中川道場)
KO 2R1分46秒
第6試合 藤井海人 VS 嶋秀太
▼第6試合 DEEP☆KICK-57.5kg契約 3分3R
○藤井海人(EXARES)
×嶋秀太(NJKF田頭道場)
判定3-0(30-28、30-27、30-28)
第5試合 奥山雅仁 VS 久保田有哉
大﨑兄弟や小川翔が所属するOISHI GYMの奥山雅仁(OISHI GYM)がDEEP☆KICKデビュー。TARGETの久保田有哉(TARGET)と対戦した。両陣営のセコンド大石駿介と菅原勇介は現役時代何度も拳を交わしたことがあるだけに、何とも因縁めいた一戦だ。
懐の深い奥山は2R久保田が前に出てきたところにコツンと右を合わせる形で先制のダウンを奪う。これで調子に乗った尾張のルーキーは再び右をジャストミート。久保田を深々とキャンバスに這わせた。2R1分16秒、目の覚めるようなTKO劇だった。
▼第5試合 DEEP☆KICK-63kg契約 3分3R
◎奥山雅仁(OISHI GYM)
×久保田有哉(TARGET)
TKO 2R1分16秒 レフェリーストップ
第4試合 繁那 VS 侑毅
▼第4試合 DEEP☆KICK-55kg契約 3分3R
○繁那(AJKN R.S-GYM)
×侑毅(キックボクシングジム3K)
判定3-0(30-26、30-26、30-26)
第3試合 Shin VS 瞬
大阪出身でTEPPEN GYM所属の瞬(TEPPEN GYM)がプロデビュー。地元Team FISTのShin(Team FIST)と対戦した。両者は1Rから果敢に打ち合う。オープンスコアは1-1のイーブン。3Rをとった方が勝ちという流れの中、Shinは乱打戦の中ファーストダウンを奪う。もうあとがない瞬は前に出るが、そこでワンツーをきれいに合わされ大の字に。Shinが鮮やかなKO勝ちを飾った。
▼第3試合 DEEP☆KICK-58kg契約 3分3R
◎Shin(Team FIST)
×瞬(TEPPEN GYM)
TKO 3R2分55秒 レフェリーストップ
第2試合 玲翔 VS マナベ・アツヤ
▼第2試合 DEEP☆KICK-56kg契約 3分3R
○玲翔(NJKF Vigor Kickboxing Gym)
×マナベ・アツヤ(Blaze)
判定2-0(30-29、29-29、30-28)
第1試合 高津瑠稀士 VS 北珠偉
▼第1試合 DEEP☆KICK-60kg契約 3分3R
×高津瑠稀士(AJKN R.S-GYM)
○北珠偉(千空館)
判定0-2(29-30、29-29、28-29)
◎DEEP☆KICK 59
2022年3月13日(日)
泉大津市・テクスピア大阪
OPEN 11:30 / START 11:45
◎DEEP☆KICK 60
同日開催
OPEN 17:00 / START 17:15
〈会場アクセス〉
〒595-0025 大阪府泉大津市旭町22−45
〈チケット〉
VIP席 ¥15,000 S席 ¥8,000 (DEEP☆KICK 60は完売) A席 ¥6,000
※当日券は¥1,000UP
※一部、二部チケット別料金(全席入替制)
〈チケット販売〉
DEEP☆KICK実行委員会(TEL 06-6754-8588)
または出場選手および所属ジム
〈問い合わせ〉
DEEP☆KICK実行委員会(TEL 06-6754-8588)
https://www.deep-kick.com
0コメント