2.9 豊中 DEEP☆KICK ZERO 18 試合結果

 殺気もあれば、オーラもあり。2月9日、大阪府豊中市の176BOXで関西圏では年間最多大会数を誇る『DEEP☆KICK』が新春第一戦として『DEEP☆KICK ZERO 18』を開催した。この大会では注目のDEEP☆KICK QUEEN-46㎏初代王座決定トーナメントも開幕。4月29日のトーナメント準決勝には百花と花田麻衣が勝ち抜いた。


(文・布施鋼治/写真・石本文子)


メインイベント 中田史斗 vs 棚澤大空


 今大会のベストバウトを挙げるとするならば、文句なしにメインで行なわれた中田史斗(究道会館)と棚澤大空(そら=TEAM TEPPEN)だろう。何が凄かったかといえば、テクニック云々ではなく、最初から最後までともに「チャンスがあれば、絶対ぶっ倒す」という殺気を漂わせていたことだ。

 その殺気は90年代の殺気を漂わせていたキックボクサーに相通じるものがあった。説得力のない言葉より万人を納得させる殺気。そんな試合を18歳の中田と17歳の棚澤が魅せてくれたのだから、関西キックの明るい未来を感じずにはいられなかった。

 1R、両者とも間合いをとりながら攻撃するチャンスをうかがう。中田がバックハンドを繰り出せば、棚澤はパンチの4連打を返していく。1分30秒過ぎ、中田の左テンカオがヒットすると、試合が動いた。棚澤も右フックを返して追撃を許さない。

 2Rになっても、スリリングの一言では片づけられないシーソーゲームは続く。中田がワンツーを出せば、棚澤も同じ数だけパンチを返していく。

そうした中、試合の流れを握ったのは棚澤の方だった。ワンツーからのハイ、さらに右ストレートをねじ込んでいく。さらに左右のボディストレートを打ち込んでいくと、中田は防戦一方に。明らかに棚澤がとったラウンドだ。

 あとがない中田は3Rになると左右のフックや右のテンカオで反撃を試みる。そんな相手の出方を棚澤はしっかりと見極めながら、右ボディストレートやアッパーを返す。中盤左フックがヒットすると、中田が下がる場面も。

結局、判定は28-30(二者)、27-30で棚澤。

試合後、決勝へと駒を進めた勝者は「先日おじいちゃんが亡くなりました。そういうことがあった中で最高の舞台で最高の結果を残すことができて本当によかった。僕よりKOが多いからといって、山田選手は僕のことを下に見ている。決勝ではしっかりとぶっ倒します」と時折言葉を詰まらせながら勝利の余韻に浸っていた。


▼メインイベント

 DEEP☆KICK-53kg王座決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R

 ×中田史斗(究道会館)

 ◯棚澤大空(TEAM TEPPEN)

判定 0-3(28-30、27-30、28-30)

※棚澤大空がトーナメント決勝に進出


セミファイナル 山田貴紀 vs 横山大翔


 セミファイナルとして組まれたDEEP☆KICK-53㎏王座決定トーナメント準決勝では山田貴紀(山口道場)vs横山大翔(拳心會館)という好カードが組まれた。ふたりをよく知る関係者は「両者はほぼ同じスタイル。昨年はともに星憂雅(IDEAL GYM)に負けているところも一緒。試合結果は想像もつかない」と興奮気味に語っていた。

 案の定、1Rから山田と横山は激しいデットヒートを繰り広げる。山田が右ミドルで攻め込むと、横山は蹴り足を掴んで前に出てワンツーからアッパーを叩き込もうとする。反対に横山がテンカオで攻めようとすると、山田はカウンターの左フックを狙う。お互い譲らない、互角の展開が続いた。

 そうした中、2Rになると、山田はガードを上げて前に出て、左のテンカオに活路を見出そうとする。中盤、山田が左のカーフをヒットさせると、横山は明らかにイヤな素振りを示す。山田はさらにカーフで追撃してラウンド終了のゴングを聞いた。

 オープンスコアは三者とも20-19で山田。こうなると、山田の勢いは止まらない。攻撃目標を横山の足に絞り込み、さらにカーフで追い打ちをかけダウンを奪う。

しかし、横山は根性のあるキックボクサーだった。効かせられながらも左右のフックや右のテンカオで反撃するなど逆転のチャンスをうかがう。

 しかし、ダメージという観点から見ると、試合全体を通して山田の有利は動かない。案の定スコアは三者とも30-27で山田を支持。3月23日の大会で予定されているトーナメント決勝へと駒を進めた。

 全試合終了後、決勝を争う棚澤大空の横に立った山田は「棚澤選手はメチャクチャ強かったけど、まだ僕の方が強いと思っている。もっと練習してきてください」と挑発した。


▼セミファイナル

 DEEP☆KICK-53kg王座決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R

 ◯山田貴紀(山口道場)

 ×横山大翔(拳心會館)

判定 3-0(30-27、30-27、30-27)

※山田貴紀がトーナメント決勝に進出


第5試合 保井広輝 vs 弘樹


 第8代王者・中嶋愛樹斗(OISHI GYM)の王座返上を受けスタートした、DEEP☆KICK-55㎏王座決定トーナメント。その準決勝で、保井広輝(LoTgym)と弘樹(Y'ZD GYM)が激突した。1R、王座奪取を目論むK-1ファイターの保井は左右のボディブローを武器に攻略にかかる。対する弘樹は抑揚のある動きから右フックを繰り出す。筆者の採点ではイーブン。マストなら、やや沖縄出身で現在は大阪在住の弘樹が優勢な展開だったか。

 続く2R、リーチの長い保井は左をクリーンヒットさせるも、弘樹も左のテンカオを返して決定打を許さない。

それでも諦めない保井は左を追撃さらに左ストレートと右カーフをつなげ、試合の主導権を握る。その後も右のカーフを浴びせていくと、弘樹は足元がフラフラに。

 このチャンスを逃す手はない。3R、保井は粘ろうとする弘樹に左右のパンチの連打やカーフで追い打ちをかける。最後はテンカオで押し切り、試合終了のゴングを聞いた。

 判定は三者とも30-28で保井。

もうひとつのトーナメント準決勝は3月大会で行なわれる井上大和(NJKF TOKEN KICKBOXING GYM)vs駿希(BKジム)。その一戦について試合後マイクを握った保井は「昔からお世話になっているBKジムの駿希君とできたらいい」とアピールした。


▼第5試合 DEEP☆KICK-55kg王座決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R

 ◯保井広輝(LoTgym)

 ×弘樹(Y'ZD GYM)

判定 3-0(30-28、30-28、30-28)

※保井広輝がトーナメント決勝に進出


第4試合 百花 vs 上田樹那


 今大会、もうひとつの女子王座決定トーナメント開幕戦は百花(魁塾)vs上田(こうだ)樹那(山口道場)。百花は元NJKFミネルヴァ日本アトム級王者で、この日がキャリア49戦目を迎えるベテラン。実績からすると優勝候補ながら、昨年はRISEで結果を残せなかっただけに、捲土重来を期しての参戦だ。

 対する上田は「山口道場でキックをするため」に、両親とともに兵庫県淡路島から大阪に移住してきたガッツの持ち主。まだ勝ち星には恵まれていないが、いまはまだ土の中から芽が出ていない状態だろう。

 入場するだけで百花はメジャーなリングで闘ってきた唯一無二の華やかなオーラを出しまくる。お腹まわりを見ても、いつになく締まっていることがわかった。1Rはお互い見合う展開が続く。セコンドに就いた従兄弟の政所仁(魁塾)から百花には「自信を持ってやれ」というゲキが飛ぶ。上田も百花の動きを見ながら、右のローやワンツーを繰り出していく。

 2Rになると、試合が動き出す。前に出てきた上田に対して百花はワンツー。さらに右ローで上田の下半身を削っていく。しかし百花より15歳年下の上田はスタミナも十分。右ストレートをスマッシュヒットさせ、試合の主導権を渡さない。その刹那、政所から百花に「下がるな」という厳しい指示が飛んだ。

 オープンスコアは19-19(×2名)、20-19(百花)とほぼイーブン。

3R、決定打がほしい百花は右フックを何度もクリーンヒットさせ、勝負の流れをグイッとたぐり寄せる。上田もなんとか食らいついていこうとするが、反撃の糸口を掴むまでには至らない。

結局、ジャッジは29-28、30-28、30-29と三者とも百花を支持。

4月29日の準決勝で百花は花田麻衣と闘うことになった。試合後、次戦でキャリア50戦目を迎える百花は「女子で8人のトーナメントを組むということは(キック界にとって)大きいこと。初戦は圧勝で勝ちたかったけど、(そうはならなかったので)帰ったらみんなに怒られると思う。しっかりと練習し直して絶対ベルトを獲る」と締めくくった。


▼第4試合 DEEP☆KICK QUEEN -46kg初代王座決定トーナメント Aブロック準決勝 2分3R 延長1R

 ◯百花(魁塾)

 ×上田樹那(山口道場)

判定 3-0(30-29、29-28、30-28)

※百花がトーナメントAブロック決勝に進出


第3試合 花田麻衣 vs 林美菜


 ここ数年ずっと白星から見離されている選手vsプロデビュー戦。ややもするとさほど注目されない一戦になりそうだったが、想像を遥かに凌ぐ熱戦となった。理由はひとつ。試合の冠として『DEEP☆KICK QUEEN-46㎏初代王座決定トーナメント』がついていたからだろう。

 連敗脱出を目論む花田麻衣(GROUND CORE)は1Rからワンツーを中心に積極的に前に出る。対する林美菜(FORWARD GYM)は今回がプロデビュー戦とはいえ、元実業団9人制バレーボールで活躍。アマチュアではK-1の『K-1 AWARDS 2023』でアマチュア最優秀選手賞を受賞した経歴を持つアマチュアエリート。

 身体能力では林が上と思われたが、花田はセコンドからの「足を止めるな」という指示を背に攻撃の手を休めない。1R終了間際にはワンツーの連打を浴びせ、ポイントを奪った。

 2Rになっても、花田は攻撃の手を休めず右フックをクリーンヒットさせるや、ワンツーで先制のダウンを奪った。

林は左のテンカオで必死の反撃を試みるが、花田の勢いは止まらない。

3Rには右ストレートを乱れ打ち。林の追撃を断った。判定はジャッジ3名とも30-27で花田。

次の百花vs上田戦後、再びリングに上がった花田は「大きな手術をして3年経ったけど、(それから)負けとドローが続いていた。今日は3年ぶりの勝利なので、メチャクチャうれしい。(準決勝で当たる)百花選手は時々一緒に練習もさせてもらっていて、強いことはわかっている。いまのわたしのままだと勝てないこともわかっている。これから練習の質の上げ、尊敬している百花選手を誠意を持ってぶっ倒したい」と宣言。場内からやんやの歓声を受けていた。


▼第3試合 DEEP☆KICK QUEEN -46kg初代王座決定トーナメント Aブロック準決勝 2分3R 延長1R

 ◯花田麻衣(GROUND CORE)

 ×林美菜(FORWARD GYM)

判定 3-0(30-27、30-27、30-27)

※花田麻衣がトーナメントAブロック決勝に進出


第2試合 平尾一真 vs チェ・ヒョクジェ


 同門のブラックハイエナ(エキスパートジム)の欠場を受け、エキスパートジムで同門のチェ・ヒョクジェ(韓国/エキスパートジム)が漢気を見せて急遽ピンチヒッターとして参戦。学校の教師を辞めキックに懸けているという平尾一真(Blaze)と対戦した。1R、平尾は構えをスイッチしながら右ロー、左ハイなど多彩な蹴りを繰り出していく。

お互いスリップダウンを喫する場面もあったが、2Rが終わった時点でのオープンスコアは2者が20-19と平尾を支持した。

 もうあとがないチェはボディフックで場内を湧かせるが、あとが続かない。逆に平尾は終盤右ストレートを決めて試合終了のゴングを聞いた。

判定は3-0で平尾。これで平尾はプロ戦績を7戦6勝(2KO)1敗とした。現在はノーランカーながら、この勝利でランキング入りは確実。DEEP☆KICKの-60㎏戦線に割って入るか。

 一方、チェも適正体重は55㎏の選手。DEEP☆KICK事務局は今回階級が上の試合を自ら買って出てくれたチェの漢気を受け、4月29日のDEEP☆KICKに適正体重でオファーすることを約束していた。


▼第2試合 DEEP☆KICK-60kg契約 3分3R

 ◯平尾一真(Blaze)

 ×チェ・ヒョクジェ(エキスパートジム)

判定 3-0(30-28、30-29、30-28)


第1試合 加古稟虎 vs ナム・ジェヨン


 昨年12月、『DEEP☆KICK 2024 YEAR AWARDS』で新人賞を受賞した加古稟虎(NJKFteamBonds)が第1試合に登場し、ナム・ジェヨン(韓国/RAON GYM)と激突した。

ジェヨンのセコンドには3月に志朗との一戦が決まっている同門のユン・ドクジェ(RAON GYM)が就く。ジェヨンはこの日がプロデビューという身とはいえ、連日イ・ソンヒョン(RAON GYM)やチャンヒョン・リー(RAON GYM)にボコボコにされているのだろう。まるで水泳選手のような後背筋を活かした左ハイや左フックは破壊力を抜群。

加古も右フックやワンツーで観客席を湧かすが、2R1分過ぎジェヨンの痛烈な左ハイで大の字にさせられた。

ジェヨンはKOで初陣を飾った。まだ23歳。181㎝という長身も魅力的だ。“RAON GYM第4の男”として台頭するか。


▼第1試合 DEEP☆KICK-65kg契約 3分3R

 ×加古稟虎(NJKFteamBonds)

 ◎ナム・ジェヨン(RAON GYM)

TKO 2R1分16秒 レフェリーストップ


〈オープニングイベント〉

NEXT☆LEVEL提供試合


 NEXT LEVEL提供試合では、塚本望夢の妹・塚本心歩(しあ=NJKFteamBonds)が目立っていた。まだ14歳ながら、石丸杏奈(VALIENTE)から右ハイでダウンを2度奪ってKO勝ち。大きなインパクトを残した。兄の背中を追いかけるように、今後プロを目指すのか?

 また韓国のアマチュア選手パク・ヒョンジョン(韓国/エキスパートジム)も登場。試合前から吠えまくって会場を湧かせていたが、試合開始のゴングが鳴ると山田悠喜(TEPPEN GYM 大阪)の右のロー、ミドル、テンカオの前に次第にトーンダウン。2R終盤にはパンチの連打を食らってついにダウンを喫し、判定負けを喫した。

それでも、アマチュアレベルでの日韓交流には大きな意味がある。今後もチャンスがあれば、韓国アマチュア勢には積極的に出場してほしい。


OP第4試合 山田悠喜 vs パク・ヒョンジョン

▼OP第4試合 -65kg契約 1分30秒2R

 ◯山田悠喜(TEPPEN GYM 大阪)

 ×パク・ヒョンジョン(エキスパートジム)

判定 3-0(20-17、20-18、20-17)


OP第3試合 長谷川心 vs 志水唱乃介

▼OP第3試合 -51kg契約 1分30秒2R

 ×長谷川心(TEPPEN GYM 大阪)

 ◯志水唱乃介(魁塾 中川道場)

判定 0-3(19-20、18-20、19-20)


OP第2試合 石丸杏奈 vs 塚本心歩

▼OP第2試合 -45kg契約 1分30秒2R

 ×石丸杏奈(VALIENTE)

 ◎塚本心歩(NJKFteamBonds)

TKO 1R54秒 レフェリーストップ


OP第1試合 加賀柚花 vs 木内りり菜

▼OP第1試合 -22kg契約 1分2R

 ◯加賀柚花(一心会)

 ×木内りり菜(風吹ジム 木内會)

判定 3-0(20-18、20-18、20-18)


◎DEEP☆KICK ZERO 18

2025年2月9日(日)
豊中市・176BOX
OPEN 10:50 / START 11:00

◎DEEP☆KICK ZERO 19

同日開催
OPEN 15:00 / START 15:10


〈会場アクセス〉

〒561-0831

大阪府豊中市庄内東町5丁目7-25

電話:06-7898-0888


〈チケット〉

VIP席(指定席) ¥15,000

S席(指定席) ¥8,000

A席(指定席) ¥6,000

スタンディング ¥5,000

※当日券は¥1,000UP

※一部、二部チケット別料金(全席入替制)


〈チケット販売〉

DEEP☆KICK実行委員会(TEL 06-6754-8588)

または出場選手および所属ジム


〈問い合わせ〉

DEEP☆KICK実行委員会(TEL 06-6754-8588)

https://www.deep-kick.com

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DEEP☆KICK

"DEEP KICK" The kickboxing field of the MMA fight event "DEEP" Started on July 5, 2009