DEEP☆KICK、再び徳島へ。5月18日、徳島石井町中央公民館で『DEEP☆KICK TOKUSHIMA 2』が700名(主催者発表)と超満員の観客を集めて行われ、地元石井町出身の稲井良弥が草・MAXを3RTKOで撃破。空位のISKAオリエンタルルール日本スーパーウェルター級王座を奪取した。全体を通して流れもよく、後ろ3試合はいずれもKOで決着がついたので、DEEP☆KICK TOKUSHIMA実行委員会では早くも第3回大会の話が持ち上がっている。なお次回大会は6月22日、DEEP☆KICKの聖地・テクスピア大阪で『DEEP☆KICK74』が行われる。
(文・布施鋼治/写真・石本文子)
メインイベント 稲井良弥 vs 草・MAX
セミの龍威地vs本野有哉、セミ前のTAKUvs嵐舞がいずれも1RKOで決着がついた影響で、メインのISKAオリエンタルルール日本スーパーウェルター級王座決定戦を迎えた会場の空気は完全に出来上がっていた。
ご当地出身の稲井良弥(TARGET大森)が登場すると、観客席からは割れんばかりの大歓声が飛ぶ。現在稲井は1引き分けを挟んで5連勝、しかも直近の3試合は連続KO中と波に乗っている。
しかも、一昨年10月に初めて行われたDEEP☆KICK徳島大会では龍威地を挑戦者に迎えDEEP☆KICK-70㎏王座の2度目防衛戦に臨み1RKOで勝利を得ている。そういうこともあり、試合前から稲井は「今回も1RKOだ」と鼻息は荒かった。入場してきた稲井からはお世辞を抜きにしてメインイベンターとしての風格が漂っていた。
対する草・MAX(TEAM CLIMB/グラバカ赤羽)はもうすぐ44歳となるベテラン。かつてパンクラスのネオブラットトーナメントで優勝したり、HEATでライト級王者になるなど、ベースはMMAの選手だ。しかしながら新人時代(20年前)はTARGETでキックボクサーとして活動した時期もあるので、時代こそかぶっていないが、稲井の兄弟子にあたる。セコンドには名伯楽として名を馳せる大道塾の加藤清尚とMMAファイターとして海外でも活躍したアニマル安西が就く。
そんな草・MAXに対して、稲井は1RからハイキックでKOを狙っていく。 負けじとTARGETの大先輩もバックハンドも狙っていくが、稲井が優勢に進めたラウンドだった。案の定オープンスコアは3者とも10-9で稲井。
続く2Rになると、レフェリーはすぐ試合を中断させ、いつのまにかパックリと割れていた草・MAXの右スネの診断を受ける。打撃系ファイターのスネが割れるのはある種職業病だ。かつてロブ・カーマンやイワン・ヒポリットも試合中にスネを割り、流血戦を余儀なくされた。草・MAXも長いキャリアの代償として、勝手に割れてしまったのか。
傷口は結構深そうだったが、試合は続行される。出血のせいか、プレッシャーが弱まった草・MAXに稲井は1Rに続き容赦なくハイキックを浴びせていく。そして右で先制のダウンを奪う。
さらにもう一度ダウンをとり、大ベテランを窮地に追い込んだ。
案の定、オープンスコアは三者とも10-7で稲井。3R、すでに虫の息となった草・MAXに対して稲井はさらに距離を詰めるかのようにラッシュを仕掛ける。とどめを刺したのは最初から狙っていた右ハイだった。
この一撃をもろに受けた草・MAXがキャンパスに倒れ込むと同時に、陣営からタオルが投げ込まれた。3R2分41秒、稲井のTKO勝ちだ。
晴れてISKA王者となった稲井は今後徳島大会でISKAのアジアや世界王座を順番に獲っていくと宣言。さらにホームリングであるRISEでは一度は試合が組まれながら眼疾でキャンセルせざるをえなかったウェルター級王者である 宇佐美″秀″メイソンとの一騎討ちを口にした。
「ノンタイトル戦でも構いません。ランカーの中でメイソンを倒せるのは俺だけだ」
宇佐美は5月29日開催のRIZIN韓国大会でジョ・サンヘとキックルールで対戦することが決まっている。ISKA王座を手土産に、四国のニューヒーローはさらに覚醒できるか。
▼メインイベント
船場化成株式会社presents ISKAオリエンタルルール日本スーパーウェルター級王座決定戦 3分5R
◎稲井良弥(TARGET大森)
×草・MAX(TEAM CLIMB/グラバカ赤羽)
TKO 3R2分41秒 セコンドタオル投入
※草・MAXに2Rダウン×2有り
※稲井良弥がISKAオリエンタルルール日本スーパーウェルター級新王者に
セミファイナル 龍威地 vs 本野有哉
セミファイナルでは稲井良弥が返上したDEEP☆KICK-70㎏王座を龍威地(NJKF ARENA)と本野有哉(照道会)の間で争うことになった。龍威地は前回の徳島大会で稲井の王座に挑戦していれば、本野は香川県の照道会で研鑚を積むファイターなので、いずれも高知や四国に縁がある。
とりわけ四国在住の本野の応援は凄まじく、試合前からすでに戴冠したような勢いを感じさせた。それはそうだろう。プロデビュー以来4戦全勝と負けなしでタイトル挑戦までこぎ着けた香川の英雄候補なのだから。
そんな熱烈な応援を背に本野は1Rからエンジン全開。ワンツーからローというコンビネーションを軸に積極的に前に出る。
龍威地が懐に入ってから右フックを狙おうとすると、逆にカウンターのフックを合わせる。カーフキックでの追撃も効果的に映った。
龍威地をロープまで詰めると、ワンツーを数えきれないほど浴びせる。残り時間30秒というアナウンスが鳴り響いた刹那、龍威地はついにスタンディングダウンを宣告される。
こうなったら、本野のチャンスだ。左ストレートで息も絶え絶えの龍威地に引導を渡した。1R2分47秒、堂々のKO勝ちだ。
プロ5戦目でチャンピオンベルトを巻いたニューチャンピオンは「応援が凄く力になった」と地元から駆けつけた応援団への感謝を口にした。さらに「8月31日には大阪で初めてRISE EVOLが開催されると聞いています。(大会実行委員長の)林さん、オファーを待っています」とDEEP☆KICKのチャンピオンとしてRISEのナンバーシリーズへの登竜門への出場を直訴した。
地元の小さな空手道場から誕生した香川の英雄候補はどこまで強くなるか。
本野の夢は香川の夢だ。
▼セミファイナル 株式会社永和presents DEEP☆KICK-70kg王座決定戦 3分3R 延長1R
×龍威地(NJKF ARENA)
◎本野有哉(照道会)
TKO 1R2分47秒 レフェリーストップ
※龍威地に1Rダウン×1有り
※本野有哉が-70kg第5代王者に
第3試合 TAKU vs 嵐舞
今大会最大のビッグアップセット、それは嵐舞(TEAM TEPPEN)がTAKU(TARGET)から1RKO勝ちを収め、一昨年12月に1RTKO負けを喫した雪辱を晴らした一戦だろう。
今回の再戦はDEEP☆KICK-63㎏挑戦者決定トーナメント準決勝として組まれたが、下馬評では「TAKUが有利」という声が多数を占めていた。無理もない。前回勝っているという精神的なアドバンテージに加え、このTARGET期待のルーキーはデビュー以来9戦全勝(6KO)と今だ負けを知らないのだから。
しかし、下馬評が相手に傾いていればいるほど、指導に熱が入る。それがTEAM TEPPENの真骨頂だ。最近の那須川龍心の神がかり的な強さはTEPPENでの日頃の練習に裏打ちされたものだろう。
この日の嵐舞もそうだった。高知出身ということもあり地元から駆けつけた応援団の熱い声援を背に1R開始早々から打って離れる戦法が功を奏したのか、試合の主導権を握る。
一方、TAKUは右ボディストレートや右の三日月蹴りを放つが、自分の距離を掴めない。
そんなTAKUに対して嵐舞はワンツーからの左をクリーンヒット。さらにハイキックを浴びせ、先制のダウンを奪う。
何とか立ち上がってきたTAKUだったが、アゴから出血していたためドクターチェックを受けると、ストップを宣告された。1R2分54秒でTKO勝ちを宣告されると、嵐舞は「見たか!」とばかりに咆哮した。
「前回TAKU選手に吹っ飛ばされたのでやり返すことだけを考え、その悔しさをバネに必死に生きてきました。TAKU選手の存在が僕をここまで強くしてくれました」
そう語りながら嵐舞は涙を流していた。すでにTAKUはRISEでDEEP☆KICK同級王者の吉岡龍輝をスピリット判定ながら撃破している。嵐舞は「次はこの階級の1位の選手とやらせてください。絶対DEEP☆KICKのベルトを獲る」とも宣言していた。嵐舞の次のマッチメークが楽しみになってきた。
▼第3試合 株式会社安心工房presents DEEP☆KICK-63kg挑戦者決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R
×TAKU(TARGET)
◎嵐舞(TEAM TEPPEN)
TKO 1R2分54秒 ドクターストップ
※TAKUに1Rダウン×1有り
※嵐舞がトーナメント決勝に進出
第2試合 平尾一真 vs 祐輝
前回のDEEP☆KICK徳島大会でプロデビュー戦を行い1RTKO勝ちを飾った平尾一真(Blaze)が再び徳島大会に出場した。対戦相手は広島在住の祐輝(OU-BU GYM)。平尾のキャリアが7戦ならば、祐輝のそれは17戦と倍以上もあったが、地元と隣接する徳島での闘いに平尾は燃えた。
勝負が動いたのは最終ラウンド(3R)だった。それまではほぼ互角の攻防を繰り広げていたが、平尾のテンカオがヒットすると、祐輝は失速してしまう。
このチャンスを平尾が見逃すはずがない。さらにヒザで追い込み試合終了のゴング。
3-0の判定で勝利をモノにした。
試合後は「DEEP☆KICKの-60㎏のベルトを狙いたい」と控え目に王座獲りを宣言した。ちなみに同級王者はタコ焼き音頭でお馴染みの健真。本野有哉に続く香川県在住ふたり目のチャンピオンを目指す。
▼第2試合 藤川建設株式会社presents DEEP☆KICK-60kg契約 3分3R
◯平尾一真(Blaze)
×祐輝(OU-BU GYM)
判定 3-0(29-28、30-28、29-28)
第1試合 田中真尋 vs 上田樹那
オープニングマッチは女子。香川県を拠点に活動を続けるBlazeの田中真尋(Blaze)が登場し、兵庫県淡路島出身ながらキックをやるために大阪に移住し現在は山口道場で練習に励む上田樹那(山口道場)と対戦した。
今年2月、札幌のBOUTでプロデビューしたばかりの田中は典型的な細マッチョ。「女子でも倒せるところをみせる」と宣言していたことが決してオーバーではない体つきをしていた。
対する上田はデビュー以来格上の相手との対戦が続き、いまだ勝ち星には恵まれていないが、キャリアを積むにつれ成長の足跡を見せてくれる努力家だ。
1R、攻勢に出たのは上田の方だった。痛烈な右ストレートを何度かヒットさせ、印象点をたぐり寄せる。
続く2R、持ち前のフィジカルを武器に田中は盛り返そうとするが、上田はワン、ツー、スリーと畳み込む連打で田中の追撃を許さない。
3R開始早々、上田はバックハンドを田中の首筋にヒットさせ、終盤にはワンツーで田中を後退させ、勝利を決定的なものにした。案の定、判定は3-0で上田。
プロ5戦目にしてようやく初勝利をあげた遅咲きの花はセコンドに就いた同門の桃花・シンデレラと抱き合いながら号泣した。
▼第1試合 ミドリタイヤpresents DEEP☆KICK-46kg契約 2分3R
×田中真尋(Blaze)
◯上田樹那(山口道場)
判定 0-3(28-30、29-30、28-30)
〈オープニングイベント〉
NEXT☆LEVEL提供試合
アマチュア日韓戦
昨年12月26日より、イースター航空が徳島~ソウルの定期便を就航させた。それを記念し、今回オープニングファイトではNEXT☆LEVEL提供試合としてアマチュア日韓国際戦 3VS3が組まれた。
アマチュアながら、国際戦というマッチメークならば観客の見方も変わってくる。しかも今回は団体対抗戦のようなコンセプトで行われたため、通常のアマチュアの試合以上に盛り上がった。最も目立つ動きをしていたのは大将戦で韓国側で唯一勝利を収めたRAON GYMのイ・ホジン(RAON GYM)。最終ラウンド(2R)になると、岡田侑大(HAKUBI GYM)を防戦一方に追い込み勝利を手にした。今後も、こういうマッチメークは大歓迎だ。
OP第9試合 岡田侑大 vs イ・ホジン
▼OP第9試合 アマチュア日韓戦 -67.5kg契約 1分30秒2R
×岡田侑大(HAKUBI GYM)
◯イ・ホジン(RAON GYM)
判定 0-3(19-20、18-20、19-20)
OP第8試合 山田真也 vs アン・ソンミン
▼OP第8試合 アマチュア日韓戦 -65kg契約 1分30秒2R
◯山田真也(パラエストラ東大阪)
×アン・ソンミン(RAON GYM)
判定 2-0(20-19、19-19、20-19)
OP第7試合 松原陸 vs イ・ウジン
▼OP第7試合 アマチュア日韓戦 -65kg契約 1分30秒2R
◎松原陸(Blaze)
×イ・ウジン(RAON GYM)
TKO 2R47秒 レフェリーストップ
※イ・ウジンに1Rダウン×1有り
OPファイト
NEXT☆LEVEL提供試合としての日本人同士のアマチュアマッチは6試合組まれた。いつも通りいずれもレベルの高い試合を見せてくれたが、その中でも目立った動きをみせていたのはVALIENTE勢だった。第6試合に出場した朴竜佑(VALIENTE)はテンポのいいミドルキックを連打で山口虎志(正道会館KCIEL)を2-1の判定で撃破した。
OP第6試合 山口虎志 vs 朴竜佑
▼OP第6試合 -55kg契約 1分30秒2R
×山口虎志(正道会館KCIEL)
◯朴竜佑(VALIENTE)
判定 1-2(19-20、20-19、19-20)
OP第5試合 石原光 vs 柚山蓮愛
▼OP第5試合 -25kg契約 1分30秒2R
△石原光(teamFIST)
△柚山蓮愛(LoTgym)
判定 1-0(19-19、20-19、19-19)
OP第4試合 横井鉄生 vs 小山一絆
▼OP第4試合 -50kg契約 1分30秒2R
×横井鉄生(正道会館KCIEL)
◯小山一絆(VALIENTE)
判定 1-2(19-20、20-19、19-20)
OP第3試合 三谷那瑠 vs 池本隆太郎
▼OP第3試合 -35kg契約 1分30秒2R
△三谷那瑠(NJKF健心塾 平野支部)
△池本隆太郎(山口道場)
判定 0-1(19-19、19-20、19-19)
OP第2試合 中村大和 vs 久保亜依斗
▼OP第2試合 -55kg契約 1分2R
◎中村大和(NJKF心将塾)
×久保亜依斗(照道会)
TKO 1R35秒 レフェリーストップ
※久保亜依斗に1Rダウン×1有り
OP第1試合 柚山黎心 vs 松本睦生
▼OP第1試合 -21kg契約 1分2R
×柚山黎心(LoTgym)
◯松本睦生(VALIENTE)
判定 0-3(19-20、18-20、19-20)
DEEP☆KICK TOKUSHIMA 2
2025年5月18日(日)
徳島県・石井町中央公民館
OPEN 12:30 / START 13:00
〈会場アクセス〉
〒779-3233
徳島県名西郡石井町石井字石井480-1
電話:088-674-2002
〈チケット〉
VIP席 ¥15,000
1階B指定席 ¥10,000
1階A指定席 ¥7,000
2階自由席 ¥6,000
スタンディング ¥6,000
※当日券は¥1,000UP
〈チケット販売〉
DEEP☆KICK実行委員会(TEL 06-6754-8588)
または出場選手および所属ジム
〈問い合わせ〉
DEEP☆KICK実行委員会(TEL 06-6754-8588)
https://www.deep-kick.com
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